イタリア・シチリア 演奏紀行

大岩篤郎(北高18期生
平成28年5月24日


 日本とイタリア国交150周年の本年、シチリアの2つの合唱団から日本の合唱団を招いて、ジィント・コンサートを開きたいとのオファーがあった。
 指名を受け、この4月初旬、私の指導する女声合唱団(コーラル・クローバー)を率い、ローマ経由にて現地へ。
 イタリアは私の声楽家としての原点(給費留学、ボローニァ国立音楽院卒業を2年間で卒業)。前回5年前の演奏旅行が北イタリア地方(今でも再度来てほしいと私にオファー有り)だったのに対し、此度は南イタリア、しかも初のシチリア(シシリー島)と聞き、心躍らせて馳せ参じた.

 シチリアに足を踏みいれて、まず驚いたことは車の渋滞。日本流に云えば、交通ルールも何もあったものではない凄まじさ。一方郊外に出ると緑溢れる大地が丘の上まで広がり、聞けばここはイタリアの穀倉地帯とのこと。同島に抱いていた私のイメージはすぐに大きく変わった。
 この季節、オレンジの真っ白い可憐な花がジャスミンの香りにも似て、実に匂い豊かに咲き乱れ(オレンジの実も美味しい)、翻弄され続けた長い歴史(カルタゴ→ギリシャ→ノルマン→イスラム等による占領)の中でも、実に長閑穏やかで 明るい印象の島である。世に云う所謂マフィアの故郷(人々の風貌だけ見るとそんな感じもなくはない。私は少し恐ろしいような暗く貧しいイメージを持っていたのだが?)とは大違い。人々は人情味豊かで親切、気候も温暖、魚料理も多く、結構美味しいのだ。
 さて、本題の二回の演奏会について以下にご報告します。

4月9日
 <T>シチリア中心地パレルモ郊外モンレアーレ(王様の住む山の意)の元教会ホール。教会と云うだけに音響は良いはずとは思っていたが、想像を絶する残響の多さに驚愕!!急遽、演奏方法を変更したり、直前まで対応に追われたが、幸い本番では聴衆の多さにも助けられ、残響も程良く緩和されヤレヤ、、、、。
 地元文化協会トップによる主催者挨拶に続き、私の指揮する合唱団で演奏スタート。初めの曲は昨年カトリックの中で聖人に昇格したマザーテレサの言葉を基に作曲されたもので、曲中のナレーションもイタリア語訳(ロザリオさん=ブレーシア在住)してもらい、地元の女性にお願いしたが、とても感動的なステージとなった。次の地元混声合唱団はイタリアの代表的作曲者ロッシーニの難曲と思われる曲をよく熟し立派な演奏だった。流石!ヨーロッパのコンクールで上位入賞する実力は見事。いつも思うことですが、イタリア人は歌うことがとても上手ですよね。オーケストラしかり、、、、。
 次に私の独唱。「アヴェマリア」(シューベルト)と「グラナダ」(ラーラ)を本当に気分よく歌うことができた。観客の熱心で暖かい拍手が何よりも嬉しく、もっともっと歌いたい心境に包まれた。
 この後も演奏会は和やかに続き、フィナーレの合同合唱は私の指揮する「大地讃頌」。日伊両国の合唱人の日本語による合同ステージである。演奏前には東日本大震災の惨状と復興状況も私の口から併せて伝えた。とてもハッピーなコンサートになったが、更に嬉しかったのは、終了後の交換パーティー。何と地元合唱団員手作りの家庭料理。そして感動のクライマックスは日伊二つの合唱団ネーム入り巨大ケーキ!!美味しいワイン片手に宴はますます賑わった。名残尽きない山の教会を出た時、眼下には一面美しく夜景が拡がっていた。成程これだ!!生憎の雨に急遽野外から室内に移された宴会だった。この絶景をバックに盛り上がりたかったのだ!主催者たちのオモテナシの心が嬉しい、、、、。


演奏終了後の交換パーテイーにて

<4月10日>
 <U>島南東部の海岸の街アグリジェント。ここにはギリシャ風神殿がたくさん並び、長い歴史を感じさせる丘の上小高い教会(本日の演奏会場)から眺める地中海が絶景絶景!!天候も最高の中、昨日とは別の混声合唱団との演奏会は一杯の聴衆が昨日にも増して素朴な素直な反応に包まれ、とても忘れることのできないステージとなった。特に私のソロでは拍手が鳴り止まず、正に演奏家冥利に尽きる一夜。時間が許せばアンコールに何曲でも応えたい気分だった。


2曲を熱唱する私


指揮者と団長さんと共に

 シチリアから見れば地中海の向かいはチュニジア(IS絡みの事件)、リビア(革命等)と何となく物騒な気持ちにもならなくもないが、現地ではそんな影響は全く感じられなくて、極めて穏やか長閑な地で暖かく素朴な人情にも触れて素敵ないい島。一度は是非行ってみていただきたい。

 私自身、NYカーネギー、そしてウイーン楽友協会で2回ずつステージに立ち、ルーマニアそしてイタリアも満喫したら、さて、次は何処へ歌いに行きましょう??